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体験局を申請してみた ~8J1YAJ~

早稲田大学無線通信研究会では、アマチュア無線体験局「8J1YAJ」の運用を行っています。
ここでは、体験局の申請に必要な書類や、申請の際のポイントについてまとめようかと思います。
あくまでも一例にすぎませんが、参考になれば幸いです。

目次(クリックで移動)
体験局とは
開局できる期間
開局に必要な書類
 ―体験局要望書
 ―立ち会う無線従事者の氏名及び無線従事者免許証の番号
 ―社団局の定款
―社団局の構成員名簿 (電子申請なら直接入力)
 ―イベントを実施する会場の同意書
 ―工事設計書 (電子申請なら直接入力)
長期の免許を取得するポイント

体験局とは

ここで取り上げる「体験局」とは、
「科学技術や無線技術に対する理解と関心を深めることを目的に、臨時に開設する社団局」 のことを指します。
この制度を用いて開局した局では、立会人として申請した有資格者のもとで無資格者も交信ができる(※)いうという点で、非常に画期的なものと思います。制度ができてからそれなりに時間がたっているので、聞き覚えのあるアマチュア無線家も多いのではないでしょうか。

(※立ち会う有資格者が行うことができる無線設備の操作の範囲内 またモールスは除く)

開局できる期間

体験局は、イベントなどに合わせて開設されることが多いように思いますが、長期間の免許を取得することも可能です。 (実際に、当クラブも7か月(この長さは我々の都合上)の免許を取得して運用しています。)
また、移動しない局の開局も可能ではあると思いますが、私たちはこれまで移動する局として開局しています。

体験局を開局するにあたって必要な書類は以下です。
① 体験局要望書
② 立ち会う無線従事者の氏名及び無線従事者免許証の番号
③ 社団局の定款
④ 社団局の構成員名簿 (電子申請なら直接入力)
⑤ イベントを実施する会場の同意書
⑥ 工事設計書 (電子申請なら直接入力)

また、私たちもまったくゼロから書類作成を行ったわけではなく、「7コールアマチュア無線クラブ」の以下のページを大変参考ににして作成しました。
こちらは非常に丁寧に記載されているので、ぜひ合わせてごらんになってください。
体験局の作り方 | 7コールアマチュア無線クラブ

体験局要望書

これはあくまで一部で,実際の書類はもっと長いです。

体験局を開設したい理由や、希望する運用日程を説明する書類です。感覚的には、作成はこれが一番大変
(次点で会場の同意書と工事設計書)


理由のほかに計画概要として、以下の点を記載しました。


・体験局の運営主体・免許人
 →社団の場合はクラブ名と代表者名です。


・関連する行事
 →体験局を運用する行事を記載します。社団局が主催する独自の行事の場合は、適当に名前を付けておくといいと思います。(「〇✕アマチュア無線クラブ アマチュア無線体験会」など)


・目的
 →体験局を開設したい理由とは別に、簡潔に目的を述べておきます。「アマチュア無線や科学の面白さのアピール」のように、公共性がわかるように記述するとよいかと思います。


・開設形態
 →「無線技術に対する理解と関心を深めるため、社団が行事等の開催に伴い臨時に開設するアマチュア局の新規開局」とすればOKです。


・希望する開設期間
 →体験局は記念局のように期間限定の免許なので、イベント期間に合わせて希望する開設期間を明示しておきましょう。ただし、厳密にイベントを開催する日のみだけしか免許されないということは無いようで、私たちが大学祭に合わせて開局した際は大学祭前日の準備日も免許されました。


・運用計画
 →運用計画として、開催日・運用地・備考を記載します。表の型式にしておくとわかりやすいと思います。


・資金計画
 →無線設備と運用費用をどう拠出するかを記述します。
無線設備については、社団の物を設備共用して使用するのか、もしくはどの無線局にも登録していないものを使うのか、明記しておきましょう。使用する無線機の詳細については工事設計書にも記載します。


・常置場所
 →無線局の常置場所を記します。社団で開局する場合は、社団局の常置場所と同じで大丈夫です。


・運営体制
 →体験局の運営体制を記しておきます。私たちは代表・運用管理者・会計の3役を設けて、それぞれについて氏名とコールサインを記述しました。

立ち会う無線従事者の氏名及び無線従事者免許証の番号

これは読んで字のごとく、体験局の運用に立ち会う無線従事者の氏名と従事者免許の番号を記します。
表の型式で書くと見やすいと思います。ここに記載されていないと立会人(コントロールOP)として運用することができないので注意してください。

社団局の定款

これも読んで字のごとくです。社団局の定款として社団局を開設したときに提出したものを添付しましょう。

社団局の構成員名簿 (電子申請なら直接入力)

またしても読んで字のごとく、社団局と同じものです。通常の構成員名簿と同様、理事と副理事については住所と所属も記載する必要があるので注意しましょう。なお、電子申請の場合は書類として用意するのではなく、申請時に直接入力します。

イベントを実施する会場の同意書

まず大事なこととして、この書類は提出が必要な場合と不要な場合があります。


提出が必要な場合は
・他の団体が主催するイベントに参加し、そこで体験局を運用する予定の場合
 (学校祭や青少年のための科学の祭典、地域の交流イベントのようなものが想定されます。)
・運用場所が常置場所ではなく、公民館の一角のように運用に際して許可が必要な場合
であると思います。(もちろんこれ以外の例もあるかもしれません。)

逆に、提出が不要な場合は
・クラブとして独自にイベントを開催する場合(イベント主催者を兼ねる場合)
だと思います。


実際、私たちが大学祭に合わせて運用したときは大学祭実行委員長からサインをもらい、下のような「体験局同意書」を作成しました。
一方で、現在私たちが有効な免許として持っているものは、独自のイベントを実施する旨で申請したので、会場の同意書は添付しませんでしたが免許されました。

会場の同意書が必要になった際は、まず誰の署名が必要なのか確認しましょう。イベントの主催者なのか、会場の管理者なのか、などケースバイケースで変わってくると思うので注意が必要です。


また、基本的に先方はアマチュア無線について知らないと思います。その場合はアマチュア無線について説明することになると思いますが、おそらくうまく伝わらないと思います(笑)
私たちが同意書をお願いしたときは、体験局の概要に加え、他の団体に迷惑をかけないことに注力して説明しました。何かいい説明があればぜひ教えてください。。。

工事設計書(電子申請なら直接入力)

工事設計書ですが、基本的には通常の申請と同様で大丈夫です。社団の構成員名簿と同様に、電子申請の場合は直接入力します。


体験局の申請として注意が必要な点は以下です。
希望する免許の期間を記載する(デフォルトでは5年、体験局要望書の内容と合わせる)
―「備考」欄に「科学技術や無線技術に対する理解と関心を深めることを目的に、臨時に開設する社団局として申請する」と記載する(だいじ)
―設備共用をする場合は、その旨の記載を忘れずに

長期の免許を取得するポイント

現在、弊会が開局している体験局「8J1YAJ」は、4月1日から10月31日までの7か月の免許となっています。
通常、イベントに合わせて開局するものなので数日間限定の免許であると思いがちですが、長期間の免許の取得も可能です。

長期間の免許のメリットとしては、その都度申請しなくてよい、というものがあります。煩雑な手続きも一度で済んでしまいますし、最も大きいのは開局申請料の2900円を一度だけ払えばよいということです。
(イベントの都度に開局と閉局を繰り返していると、イベント数×2900円の負担になってしまいます。。。)

そこで、私たちが申請したときのことを踏まえ、長期の免許を取得するポイントについて記したいと思います。

社団で独自のイベントを主催する

まず、イベントの主催者を自分たちの社団にするという点です。たとえば「〇✕クラブ アマチュア無線体験会」 というものを作ってしまい、それを定期的に開催することで、長期的な免許をとることができます。

さらに、このように独自のイベントを行う場合は、イベント主催者が自分たちであることから会場の同意書も不要になるため、申請手続きが少し簡単になります。

イベントのスケジュールを公開する

独自イベントを計画した後は、それを公にする必要があります。
まず、イベントを行う日程をしっかりとすべて決めます。その後、社団のHPまたはSNSで体験局のイベントを行う旨告知をします。これにより、総通もイベントが実施予定であることが確認できるようになります。
最後に、告知したページを「体験局要望書」に書いておけば、申請時に総通がそこを確認してくれます。

私たちの場合は、イベントスケジュールを体験局のページに掲載しています。

また、イベントスケジュールを決めたら長期の免許でもその日だけしか運用できないという訳ではありません。
私たちの場合は「要望書」に以下のような但し書きをしておきました。

体験局を運用する機会として,現時点では以下のイベントを予定しています。この他にも3(注:開設する目的)に述べた目的に適する機会での運用を行う予定です。
なお,イベントを実施する際は事前に当クラブのホームページ https://jh1ydt.com/8j1yaj/ 等
にて告知を行います。

特にこれについて総通から指摘を受けることは無かったので、このようにすればスケジュールした以外の日程でも運用することは可能だと思います。

さいごに

以上、体験局の申請についてまとめてみました。
誤りなどありましたら、ぜひご教示ください。

これまで、アマチュア無線の交信は「公開運用」などで演示することしかできませんでした。
しかし、この体験局の制度を活用すれば、実際に交信してもらうことができます。
実際、複数の機会で体験局を運用しましたが、アマチュア無線の魅力を伝えるとても良いものだと感じています。

このページが体験局を開局したい方の参考になり、アマチュア無線の魅力を広げるきっかけになれば幸いです。